― 公共スポーツ施設の管理構造と地域・健康政策への再接続 ―
要旨
北海道発祥のスポーツであるパークゴルフは、1980年代以降、自治体主導による施設整備と市民活動の広がりを背景に急速に普及した。しかし近年、北海道を中心に愛好者人口の減少、利用者の高齢化、施設利用の停滞が顕在化している。本稿では、パークゴルフが本来有していた社会的機能を整理した上で、現行の管理運営構造が抱える課題を明らかにし、健康政策・公共施設マネジメントの観点からパークゴルフを再定義することの必要性を論じる。
1.はじめに
パークゴルフは1983年、北海道幕別町において、公園の有効利用を目的として考案されたスポーツである。専用の道具と簡易なルールにより、高齢者を含む幅広い世代が参加可能であることから、北海道を中心に急速に普及した。日本パークゴルフ協会の設立以降、各自治体はパークゴルフ場の整備を進め、地域単位の協会が設立されるなど、市民活動としての広がりを見せてきた。
しかし現在、特に北海道においては、パークゴルフ愛好者の減少、施設利用の固定化、管理水準の低下といった問題が指摘されている。本稿では、これらの現象を単なる「高齢化」や「人気低下」として捉えるのではなく、制度的・構造的要因に着目して分析を行う。
2.パークゴルフの成立過程と社会的機能
パークゴルフが「コミュニケーションスポーツ」と呼ばれてきた背景には、初期段階における地域間交流の存在がある。黎明期には、パークゴルフ場を持たない自治体の愛好者が、他地域のコースへ移動してプレーを行い、交流を深めていた。やがて自地域にコースが整備されると、今度は受け入れ側として他地域の愛好者を迎え入れる関係が生まれ、大会参加や運営においても相互扶助が機能していた。
このように、パークゴルフは単なる競技スポーツではなく、「移動」「交流」「関係性の循環」を内包した社会的装置として機能していた点に特徴がある。
3.現行制度における課題
3.1 公共施設化と目的の喪失
現在、多くのパークゴルフ場は自治体が管理運営するパブリックコースであり、公園施設の一部として位置付けられている。その結果、パークゴルフ場は「競技性」や「交流創出」という本来の目的を失い、単なる余暇施設として扱われる傾向が強まっている。
特に、競技会の開催を原則想定しない運用が常態化することで、コース品質に対する要求水準が低下し、「多少荒れていても問題ない」という管理意識が生まれている。
3.2 管理水準の低下と利用者離れ
札幌市をはじめとする都市部では、芝生管理の劣化に対する利用者の不満が顕在化している。クローバーやタンポポ、オオバコなどの雑草の増加により、ボールの転がりが悪化し、スポーツとしての楽しさが損なわれているとの指摘は年々増加している。
これらの問題は、単なる景観の問題ではなく、利用満足度の低下を通じて利用者減少を招く要因となっている。
3.3 契約手法と説明責任
さらに、自治体における施設管理業務の多くが随意契約によって行われている点も、管理品質の検証や改善を困難にしている。随意契約自体は合理性を有する場合もあるが、契約が固定化することで、成果評価や改善のインセンティブが働きにくくなるという構造的課題を抱えている。
4.健康政策との接点
高齢者施策において近年重視されているのは、単なる運動機会の提供ではなく、「外出頻度の維持・向上」である。外出機会の減少は、フレイルや要介護化の進行と強く関連していることが指摘されている。
パークゴルフは、歩行、軽運動、会話・交流を同時に行うことができる活動であり、外出行動を促進する点で極めて優れた特性を持つ。しかし、施設の質が低下し「行きたいと思えない場所」になれば、この効果は発揮されない。
したがって、パークゴルフ場の管理品質は、スポーツ行政の問題にとどまらず、健康・福祉政策の一環として再評価される必要がある。
5.パークゴルフの再定義
以上を踏まえ、本稿ではパークゴルフを以下のように再定義することを提案する。
パークゴルフとは、競技スポーツではなく、
市民の外出行動を支え、交流を生み、健康寿命の延伸に寄与する
公共的ライフスポーツである。
この再定義に基づけば、評価軸はスコアや大会数ではなく、利用頻度、外出回数、継続参加率といった行動指標に置かれるべきである。また、施設管理においても、芝生管理などの基礎的品質を維持することが、政策的価値の創出に直結する。
6.おわりに
パークゴルフは衰退しているのではなく、役割を終えたまま次の役割が与えられていない状態にある。すでに整備された公共資産を、どのような目的と価値観で活用するのかが、いま改めて問われている。
パークゴルフを「競技」から「暮らし」へ、「施設」から「行動」へと再定義することは、地方自治体が抱える健康・財政・公共施設マネジメントの課題に対する、現実的かつ持続可能な解の一つとなり得るだろう。

